女性の起業相談を受けていると、よく耳にする言葉があります。
「私は、そんなに稼ぎたいわけじゃないんです」
「好きなことを仕事にできれば、それでいいんです」
「家族との時間を大切にしたいので、売上ばかり追いかけたくないんです」
その気持ちは、よくわかります。
私自身、仕事だけで人生を満たしたいとは思っていません。
家族との時間も大切にしたいし、趣味も楽しみたい。働く時間だって、自分で決めたい。
だから、会社を大きくすることや、年商を増やし続けることだけが正解だとは思っていません。
でも、そんな女性たちに、いつも伝えたいことがあります。
あなた自身が稼ぎたいかどうかと、あなたの事業がお金を必要としているかどうかは、まったく別の話です。
今日は、女性の一人ビジネスにこそ必要な「経営」について、私の考えを書いてみたいと思います。
「稼ぐ=自分の懐を豊かにする」ではない
「もっと売上を上げましょう」
「利益を出しましょう」
そうお伝えすると、お金をたくさん稼ぐことや、贅沢な暮らしを目指すことだと受け取られることがあります。
でも、私がお伝えしたいのは、そういう話ではありません。
事業にお金を残すこと。そして、そのお金を少しずつ増やしていくこと。
ここに目を向けてほしいのです。
売上が入ったら経費を支払う。
残ったお金を生活費に使う。
そして、翌月もまた売上をつくる。
もちろん、個人事業主にとって、事業から生活費を得ることは大切です。
でも、毎月の売上を使い切り、事業を維持するためのお金がほとんど残らない状態だったらどうでしょうか。
売上が落ちた月。
突然パソコンが壊れたとき。
自分や家族の事情で仕事を休まなければならなくなったとき。
新しいサービスをつくるために投資が必要になったとき。
そのたびに、お金の不安を抱えることになります。
自由に働きたくて起業したのに、お金のために働き続けなければならない。
それでは、何のために起業したのでしょうか。
私が考える経営におけるお金とは、自分を豊かに見せるためのものではありません。
事業を守り、経営の選択肢を増やすためのものです。
「やりたいことをやりたいだけ」では、うまくいかない理由
好きなことを仕事にしたい。
自分のペースで働きたい。
苦手なことはなるべくしたくない。
どれも悪いことではありません。
むしろ、そんな働き方を実現するために起業する人も多いと思います。
ただ、ここには大きな落とし穴があります。
それは、自分の「やりたい」だけでは、事業は成立しないということです。
どんなに自分が好きなことでも、それを必要としているお客様がいなければ、売上にはつながりません。
どんなに売上があっても、経費がかかりすぎれば利益は残りません。
どんなに帳簿上の利益が出ていても、手元の資金が不足すれば事業を続けることが難しくなります。
つまり、やりたいことを仕事にするためには、やりたいこと以外にも考えなければならないことがあるのです。
それなのに、うまくいかなくなると、
「もっと頑張らなきゃ」
「もっと発信しなきゃ」
「もっと自分を信じなきゃ」
と、行動量や気持ちの問題にしてしまう。
でも、本当に足りないのは、気合いや根性なのでしょうか。
私は、そうではないケースを何度も見てきました。
やりたいことをカタチにするのは、気合いではなく「経営の理解」と「お客様理解」
私が女性起業家に伝えたいことは、とてもシンプルです。
やりたいことをカタチにするために必要なのは、経営の理解とお客様理解です。
まず、お客様理解。
自分が何をやりたいのかを考えることは大切です。
でも、同じくらい大切なのが、お客様のことを理解すること。
誰が、何に困っているのか。
どんな未来を求めているのか。
自分の提供するサービスが、どのような価値を生むのか。
そして、その価値に対して、お客様はいくらなら納得してお金を払ってくださるのか。
ここを理解しないまま、どれだけ商品をつくっても、どれだけSNSで発信しても、なかなか結果にはつながりません。
一方で、お客様のことばかり考えて、自分の事業を犠牲にしてしまう人もいます。
お客様に喜んでほしいから、価格を下げる。
期待に応えたいから、サービスを追加する。
頼まれたら断れず、仕事を引き受ける。
その結果、忙しいのにお金が残らない。
これも、経営の視点が不足している状態です。
お客様に価値を届けながら、自分の事業にも利益を残す。
その両方を実現するために、経営の理解が必要なのです。
自分のやりたいことだけを見ていては、お客様が見えなくなる。
お客様のことだけを見ていては、自分の事業が続かなくなることもある。
だからこそ、この2つの視点を持ってほしいと思っています。
私の経営観の原点は、会社員時代にある
私は起業する前、ファーストリテイリング傘下の企業で働いていました。
そこで学んだのが、柳井正さんの掲げる「全員経営」という考え方です。
経営を考えるのは、社長や役員だけではありません。
現場で働く一人ひとりが、経営者の視点を持ち、自ら考え、判断し、行動する。
私は、そんな環境で育ってきました。
その後、店舗の責任者やエリアマネージャーとして経験を重ねていくなかでも、仕事を単に与えられた業務として捉えるのではなく、事業全体を考える視点を大切にしてきました。
だから私にとって「経営」とは、起業してから初めて学んだものではありません。
会社員時代から、仕事に向き合ううえでの土台だったのです。
2017年に独立し、2020年には法人化。
自分自身の事業を経営するようになってからは、会社員時代とはまた違う難しさも経験しました。
売上が増えることと、お金が残ることは違う。
仕事が増えることと、経営が安定することも違う。
年商が大きくなったからといって、自分の理想とする働き方が実現するとは限りません。
むしろ、売上を追いかけることで、時間もお金も自由にならなくなることがある。
私は、こうしたことを身をもって学んできました。
だからこそ今、改めて思うのです。
女性の一人ビジネスにも、もっと経営の視点が必要だと。
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マインドを整えることと、経営を学ぶことは違う
女性向けの起業講座には、さまざまなものがあります。
自分らしく生きる。
好きなことで豊かになる。
理想の未来を描く。
もちろん、自分の価値観を見つめ直したり、考え方を整えたりすることに意味がないとは思いません。
でも、それだけで経営ができるようになるわけではありません。
自分を信じることと、お客様から選ばれることは違います。
理想の未来を描くことと、利益が残る仕組みをつくることも違います。
行動力があることと、適切な経営判断ができることも違います。
どれだけマインドを整えても、お客様が必要としていない商品は売れません。
どれだけ前向きに行動しても、価格と経費のバランスを理解していなければ、事業に利益は残りません。
そして、どれだけ自分の夢を語っても、事業を続けるための資金がなければ、その夢を実現し続けることは難しくなります。
私は、女性起業家にもっと気合いを入れてほしいわけでも、もっとポジティブになってほしいわけでもありません。
もっと働いてほしいわけでもありません。
必要なのは、ふわっとした精神論だけでは得られない、具体的な経営の知識と実践です。
売上、経費、利益、資金の流れを理解する。
お客様のニーズを理解する。
自分のサービスの価値を考える。
価格を決める。
どこに時間とお金を使い、何をやめるのかを判断する。
うまくいかなかったときには、何が原因だったのかを数字と事実から考える。
こうした一つひとつの積み重ねが、事業をつくっていきます。
「できる気がする」と「経営できる」は、まったく違うのです。
一人でやっているから、経営を学ばなくていい?
「私は一人で仕事をしているだけなので」
「そんなに大きな事業ではないので」
そうおっしゃる方もいます。
でも、一人で仕事をしているからこそ、経営を学んでほしいのです。
大きな会社であれば、経理担当者がいたり、営業担当者がいたり、それぞれの役割を担う人がいます。
一方、一人ビジネスでは、商品づくりも、集客も、お客様対応も、数字の管理も、すべて自分で判断しなければなりません。
つまり、一人ビジネスこそ、自分自身が経営者であることを忘れてはいけないのです。
そして私は、事業を大きくすることだけが成長だとは思っていません。
売上を増やすために働く時間を増やすのではなく、限られた時間で利益を残せる仕組みをつくる。
必要のない経費を見直す。
自分が提供する価値に見合った価格を設定する。
事業に使える資金を少しずつ積み上げる。
お客様にとっても、自分にとっても、無理のない事業をつくる。
これも、立派な経営の成長です。
私自身、現在は週3日、1日4時間という働き方を基本にしています。
仕事以外にも、大切にしたい時間がたくさんあるからです。
だからこそ、働く時間を増やすことではなく、限られた時間の中でどのように価値を提供し、利益を残していくのかを考えています。
仕事だけで人生を満たさないために、経営が必要なのです。
だから私は、女性に「経営」を教えたい
私はこれまで、Webデザイン、集客、商品設計、サービスづくりなど、さまざまな形で女性の起業をサポートしてきました。
もちろん、これらは事業をつくるうえで欠かせないものです。
でも、集客ができるようになることと、経営ができるようになることは違います。
商品をつくれるようになることと、事業を続けられることも違います。
起業する方法を学ぶだけでは、その先の事業を守ることはできません。
だから私は、女性に経営を教えたい。
ただ売上を増やす方法ではなく、利益を残す考え方を。
ただ商品を売る方法ではなく、お客様を理解し、価値を届ける方法を。
ただ行動する方法ではなく、自分で考え、判断できる力を。
身につけてほしいと思っています。
年商何千万円を目指さなくてもいい。
会社を大きくしなくてもいい。
一人で、小さく、好きな仕事を続ける。
それも立派な経営です。
ただし、小さく続けることと、経営を考えなくていいことは違います。
「稼ぎたいわけじゃない」という言葉で、経営から目をそらしてほしくない。
お金を稼ぐことが人生の目的である必要はありません。
でも、事業を続けるために、利益を残し、資金を増やしていく視点は必要です。
やりたいことをカタチにするのは、気合いや根性ではありません。
お客様を理解し、経営を理解し、それを実践していくことです。
自分の好きなことを、自分の好きなように、長く続けていくために。
私は、もっと稼ぐ女性を増やしたいのではありません。
自分の好きな仕事を、自分の意思で続けられる女性経営者を増やしたいのです。
